Each Tempo

―それぞれのテンポで

その鼻、へし折って差し上げます―毒子編

他人の好意や行為を喰い尽くす大人である雛さま*1を親に持つ、神経発達症ぎみ*2な社会人の半生を「実家と自称記」というカテゴリに投稿しています。コロナ禍に知り合った方で、母にとてもよく似たアラサーの雛さまXに出会いました。雛さまXもまた、他人への敬意や感謝の気持ちが薄く、天上天下唯我独尊と言いう言葉がお似合いな方でした。この方の場合は、ネタで自身のことを「毒子」だと称していました。後に、ネタではなく、本当に毒子という存在がいるのだと、思い知らさらることになりました……。

梅雨の晴れ間に、雛さまXと2人でとある個人の料理店へ入った時のこと、雛さまXは自分に対して「人としてどうかと思う……」ということをしでかしました。その日は、店主の誕生日で20年来の常連さんが来ており、その常連さんが祝い酒だと言ってアルコール度数の高い高級な酒を注文し、我々にもふるまってくれました。お祝いということで、ありがたくご相伴に預かったのですが、その後、その場では部外者であるはずの雛さまXが、その場にいた常連さんの関係者にどんどん高級な酒を注ぎだしたのです。果ては泥酔し、店の化粧室を占領し、化粧室の備品を壊したり、テーブルの上で嘔吐するなど酒に呑まれました。

泥酔した雛さまXを数時間介抱し、ヘトヘトな中、家まで送り届けようとしましたが、途中でチャラい若人達にカラオケに行こうと誘われました。雛さまXは、あろうことか、介抱して家に送り届けようとしている自分を置いて、その誘いに乗ろうとしました。ここまででも、自分にとっては十分に不義理で不快な出来事です。しかし、驚くなかれ、これだけでは終わらないのが雛さまです。

家まで送り届けた翌日、雛さまは自分に詫びる様子もなく、「おいしい食事を吐いたことが悔やまれる」というのです。泥酔した時の出来後を確認しようともしないので、「こんなことがあったんだ、みんな助けてくれた。」と伝えても、「泥酔しているだけの人のことは何とも思わない、人を殴ったとかではないだろう?」「泥酔の客なんて店にとってはよくあることだから、店に対して何かしようなんて思わない」と……、今回しでかしたことは迷惑に入らないといわんばかりに自分を棚に上げた主張を続けるのです。とどめの一撃は、「(あなたに対して何かするかどうかは、怪我や器物破損など)何をしてしまったかの度合いによる」というのです。開いた口がふさがりませんでした。この件を車の事故か何かだと思っているんでしょうか。ここまで自分都合で他人と関われるものなのか……と怒りよりも恐怖を覚えました。

普段から、雛さまXにはこういった傾向があることは、うすうす感づいていました。ただ、このときの自分は、雛さまXに失敗しても大丈夫なんだと経験を積んでほしかったのです。人は失敗したり誰かに迷惑をかけても、助けてくれたり許してくれるものなのに、雛さまXは、それを知らずに通り過ぎてきたのでは?と感じていたからです。この時、迷惑をかけたのは家族で切り盛りする個人経営店でした。後に、お詫びの意味も込めて、パートナーと食事へ行った際には、人とのかかわりを大切にしながら、経営しているという話が聞けました。もし、雛さまXがこのお店にお詫びにきていれば、きっと許してもらえたでしょう。そんな風に、迷惑をかけても持ちつ持たれつの経験を積むことで、閉じた世界から飛び立てるはずです。

雛さまXは、この件以来、関わりがなくなり、その後、どうしているかはわかりませんが、自分にとても重要なことを教えてくれました。それは……雛さまは謝らないということです。そして、まともな会話が成立しないことも改めて再認識できました。なので、雛さまである母は、2つ前のブログのような手紙の文章は書けないのです。

これ以前にも、雛さまXの不義理な行動について、「それは人としてどうかと思うよ?」と問いかけたことがありました。そのとき、不可解なことが起ったのです。話しているそばから、起きた出来事を「自分はそんなことはしていない」「こういう心理が働いて自分意思とは関係なく行動してしまった」「もし、そんなことをしたと仮定するなら、背後にこういう理由があるからかもしれない」と他人事のように語りだし、自分を正当化するのです。正直、何を言っているのか理解に苦しみました。目の前で、記憶の改ざんと消去が繰り広げられたのです。

この出来事から、自分に都合の悪いことは絶対に受け取ろうとしない、現実を見ようとしない事がわかりました。なんなら、無かったことにするのですから驚きです。口を開けて与えてもらうことに必死なだけの雛さまは、「おなかがすいているんだから食べさせて!」と言っているだけで、何も悪いことはしていないのです。店で他人のお酒を注ぎ大騒ぎするのも、泥酔して介抱してもらうのも、付き添いを置いてカラオケの誘いに乗ろうとするのも、全ては「満たされないのは私のせいじゃないんだから、まわりがなんとかしてよ!」という飢えなのでしょう。
当たり前ですが、自分の人生を自分で歩んでいない人には、自分に対する責任感もないのです。おそらく、「悪いことはしていない=謝罪する必要がない」と、ごくごく自然に自分の都合しか考えていないのです。母と話しても同じことが起こるでしょう。雛さまXは、母に事実を伝える意味がない事を教えてくれました。この事は、自分にとってかなり大きな気づきをもたらしてくれて感謝しています。

そんな雛さまXもまた、とんでもない勘違いをしているため、生きづらそうにしています。寄生先の実家の両親のことを奴隷のように扱い、自身が損をしないかといつも脅えている。両親のフォローが生命線なのに、口汚く罵り、自分のことを王様かなにかと勘違いしていらっしゃるようです。親のスネかじりでお金が大好きな雛さまは、諭吉さんの札束で、その鼻、へし折って差し上げます。ぺきっっ!

*1:精神科医Tommy氏の造語「雛人間」を参考にした造語。誰かに餌を与え続けてもらわないと生きていけない人のこと。「毒親」とほぼ同義。

*2:所謂、発達障害グレーゾーン